Signetのリージェンシーシリーズのカーラ・ケリーの古本を買いだした頃から、 メアリ・バログという人の本も随分高いわ、とは思っていましたが、 自分が買うようになるとは思ってもいませんでした。 カーラは買っていたけれど、ほんとうはリージェンシーってあまり好みじゃなかったから。。 でも、世評が高まると、つい、気になって・・・ どうせ読むならみんなが凄いと言ってるやつを読もうと、色々海外のレビューを見て、 「A Precious Jewel」を買いました。 あぁ、参った。。。心臓つかまれました。 なぜ今まであまりリージェンシーが好みじゃなかったかというと、時々イライラするんですよね。 いつもいつも結婚狂想曲ばかりで。 ヒロインたちは、いったい自分の人生とか社会とかをどう考えているんだろう。 「社交界デビュー」や「結婚」以外の道がないとしても、なんていうか「生きる」ってことを 真剣に感じさせてくれる物語が時には読みたくもなるじゃない? 「A Precious Jewel」は違いました。 この時代の矛盾、ジェントリー社会の矛盾、男性社会の狡さを見せつけて、 女性の価値とは? 人間としての価値とは何かを問いかけてくれました。 こんな作品がシリーズロマンスに発表されていたってことに驚きます。 もの凄いことですね ------------------------------- (追加) Notorious Rakeを読んで メアリ・バログの作品は轟々と落ちる滝にうたれている修験者のようですね。 なぜ自分は相手に惹かれるのか? なにを自分は相手に求めているのか? なぜ自分は相手を受け入れられないのか? なにが自分を躊躇わせるのか? どんな未来を自分は望んでいるのか? 自分は一体何者か? 「想い」を巡るありとあらゆる事を突き詰めようと考え続け、 その過程でかさぶたをはがして痛いところをえぐる事も辞さない。 この内面的で緻密な作業と同時に、とても熱く苦しいほど官能的な肉体の交わりも描く。 激しく落ちる滝の水が体を叩きつけるように、人を飲み込むダークパッションも赤裸々に描きつつ、 同時に、真摯で厳しい問いかけを繰り返しヒーロー、ヒロインに突きつける。 圧倒されますね。。 ------------------------------ (追加) The Precious Jewel の プリスとジェラルドのその後が Christmas Bride に登場します。 ふたりの歩んだ険しい道、、読んでいて胸が痛くなりました。。
カテゴリー | 題名 | 過去 | 出版 | ジャンル | ヒロイン、ヒーローの名前 | 感想 | 一言 |
Signet | The Red Rose | Mar-86 | 女を軽蔑する傲慢ヒーロー、 足の不自由なヒロイン | Miss Rosalind Dacey(21)、 Earl of Raymore Edward Marsh(32) | 完成度は低いがバログらしさの片鱗はみえる。ヒーロー、なんで途中からそんなメロメロになっちゃうんだー(笑)。後見人としてこんな行動を許すわけにはいかんのだ!結婚せねば!(笑) | うふ | |
Signet | The Ungrateful Governess | ヒロインの母は2才のとき死亡、父は22才のとき死亡。 | Oct-88 | 傲慢ヒーローと、プライドの高いヒロイン | 家庭教師Jessica Moore (24)、 Rutherford伯爵 Charles(29) | う〜ん、、ちょっとイライラする〜。。いつもタイミングが悪く、言葉が足りなくて、相手を怒らせてばかりで、お互いに愛されていないと思い込む。 相手を屈服させるまで折れないヒロインは、ちょっぴり苦手なんだ・・ | |
Signet | Lady with a Black Umbrella | Sep-89 | 歩く大災害ヒロイン 便宜婚約 ヒーロー妹のフォーチュンハンター | 田舎の男爵の娘Miss Daisy Morrison(25)、侯爵の息子Viscount Kincade, Giles Fairhaven(28) | 最初の財布泥棒から伏線があったとは、、どたばたっぽいのに意外と癒されて温かい。ヒロイン妹とヒーロー弟のロマンスがしっとりしていて素敵。 | うふ | |
Signet | Snow Angel | ヒロイン10才のとき父死亡。 17歳のとき32歳年上の紳士と結婚、8年の幸せな結婚生活の後夫死亡、15ヶ月喪に服す | Jun-91 | 大雪で同宿 姪の結婚相手だった。。。読んでるところ(放りっぱなし) | |||
Signet | The Secret Pearl | Sep-91 | 傷ヒーローの再生 追い詰められて売春をしたヒロイン | Isabera Fleur(23)、 Fidgeway公爵アダム・ケント | 愛を求めるヒーローが、ひたすら尽くし君になるところに妙な物足りなさを感じる。彼の孤独の深さは感じるが、彼には失うものなど無かったように思える。ヒロインが自分とは何かを問うのに対してヒーローはそこまで自分に問いかけていないような。。甘すぎるラストが、ちょい残念。。 | 上手いんだけれど・・・ | |
Signet | The Notorious Rake | ヒーローは15年前に母親と兄を殺したと噂されている。 ヒロインは夫と共に半島戦争に2年従軍した、7年前に夫は戦死。 | Sep-92 | 悪評がつきまとう放蕩ヒーロー 青靴派未亡人 家族の確執 | Lady Mornington Mary Gregg(30)、 Lord Edmund Waite(36) | 好きだわ・・・。何ていったらいいか、濁ったような暗さと切ない惨めさがあるのに、温かく優しい気持ちになれるという不思議。「Rakeを再生させる優等生ヒロイン」の王道なのに実にバログらしいメスさばき。 | 大好き! |
Signet | A Christmas Promise | Dec-92 | 死に目の父の願い 階級もの 契約結婚 | 裕福な商人の娘Eleanor Transome(19)、 Lord Randolph Falloden | うーん、、全くダメでした。。そもそもヒロインが矛盾している。父親を愛しているヒロインが、なぜ父親が自信をもって選んだ夫をずっと「だらしない貴族」だと決めつけて嫌うのかしら。無理やり誤解し続けるのがイライラ。。 | ||
Signet | A Precious Jewel | ヒロインの母は10歳の時死亡、父と兄が22才のとき、相次いで死亡。 ヒーローの母は8才の時、家から出てゆき、13才のとき死亡。 | Jun-93 | 人を愛するということ | 娼婦プリス(Priscilla Wentworth 23)、 男爵Sir Gerald Stapleton(29) | いやぁぁん、やられた。。ここまで納得させられるとはねぇ。。ジェラルドがどうしてもプリスの気持ちを受け容れられないってことも、プリスがどうしても愛という幻想を見れないことも、、ほんと、胸を切りつけられるように伝わるわ。。これは特別な凄い本だわ。 | 特別! |
No Room at the Inn | Nov-93 | クリスマスもの短編 | 大雨でみすぼらしい宿屋に足止めされた数名の客の物語。 見失っていた愛が奇跡のように皆を包む。 | ||||
Signet | Dancing with Clara | ヒロインは子供の頃に母病死。自分もその病気で下半身に力が入らなくなった。 父は1年前に死亡。 | Feb-94 | 傷ヒロイン 車椅子ヒロイン 借金の山ヒーロー 便宜結婚 | 裕福な相続人Clara Danford(26)、 ベラミー男爵の長男Frederick Sullivan(26) | つらい、、自分のお金目当てなのは承知の上で、親切で健康的でハンサムなヒーローを自分のものにしたくて結婚したのに、幸せを信じてしまいそうになる自分が嫌で、甘い言葉にイライラして、、、わかるなぁ。。不満はヒーローの秘密が明かされる過程が煩かったこと。 もっとシンプルに二人の関係を書いてもよかったんじゃないかなぁ。 | うる |
Signet | Lord Carew's Bride | ヒーローは6才のとき落馬で大怪我、右手は曲がっている、右足は短い。 | Jun-95 | dark Angel2 傷ヒーロー 右手と右足が不自由なヒーロー 愛を避けるヒロイン へびの舌 | Samantha Newman(24) Marquess of Carew Hartley Wade(27) | 危険な悪人を忘れられない、憎しみは愛に近いの? 安心と友情を求めてヒーローと結婚したヒロインはおだやかな幸せは愛とは別ものと思い込むが。。 ヒーローさま、あなたの愛の強さと献身にはもう泣けますよー。キックとパンチにはほれぼれしました〜(笑) | |
Berkley | Heartless | ヒロインの母2年前に死去、父は負債を残して1年前に死去。 ヒーローの父は5年前に死去、兄は2年前に死去。 | Oct-95 | 1755年 秘密を抱えたヒロイン ヒーロー10年ぶりの帰郷 家族の確執 へびの舌 | 伯爵の娘Anna Marlowe(25)、 Lucas Kendrick, Duke of Harndon(30) | 秘密を抱え込むヒロインものってあまり好きじゃないので、イライラしちゃうんだ。上手いんだけどねぇ、、へび女、恐すぎ。。 | |
Berkley | Silent Melody | ヒーローは3年前に東インド会社の上司の娘と結婚。子供ひとり。 | Aug-97 | 1763年 ヒーロー7年ぶりの帰郷 聾唖ヒロイン サスペンス へびの舌 | Emily Marlowe (22)、Lucasの弟 Ashley Kendrick(30) | イライラのし通しだった。ヒーローの身勝手さに振り回された気がする。 文字が書けるのにコミュニケーションを取ろうとしないヒロインは、みんなが心配しているのに誰にも相談せずに怯え続けるし、「なんちゃってゴシック」。 悪役もなんだかワケのわからない悪役で、人の死に意味が無くて困ってしまった。 | >_< |
Signet | The Famous Heroine | ヒロインはDuke of Bridgewaterの甥を川で助けた。 | Feb-96 | dark
angle3 [設定]は前作の3ヵ月後 階級の違い 社交界の滑稽ぶり ユーモア系 |
裕福な商人の娘 Miss Cora Downes(21)、 Lord Francis Kneller(30) | 「歩く大災害」ヒロインをそれほどユーモラスに感じなくて、ここは少し白けたが、二人ともとても気持ちよいキャラクターで読んでいて楽。幸せな家庭が目に浮かぶ。 | |
Signet | The Plumed Bonnet | ヒロインは両親の死後、6年間ガヴァネスをしていた。ジェントリーの祖父の遺産相続人になった。 | Sep-96 | dark angel4 [設定]はFamous
Heroinの6年後 階級の違い 貴族とは |
Miss Stephanie Gray(26)、 Duke of Bridgewater Alister Munro(34) | あのクールで尊大なデュークがとうとうっ! わっはっは、本当は辛く切ない物語なんだが、あの公爵が自分の恋にアップアップしている姿を見るとつい笑ってしまう。 ちぢこまっていたヒロインが開放された後出来すぎヒロインになってしまうことに少し違和感をおぼえた。 | |
Jove | Indiscreet | ヒロインは5年前に生家から縁を切られた。 ヒーローは3年前に半島戦争に出征している間に婚約を反故にされた。 | Jan-97 | [Four Horsemen of the Apocalypse 1] 名を汚した女性 | Catherine Winters(25), Viscount Rawleigh Rex Adams(35) | バログ節全開の前半は、人間の弱さに切りきり舞いさせられました。 時代のルールにそむいた女の受ける罰(涙)。Rexを絞めたろか!と何度も思ったけれど、後半は出来過ぎヒーローになってしまいました。それもなんだか不満だ(爆)。 Horatiaが最後まで可哀相。 | うる |
Signet | The Temporary Wife | ヒロイン17歳のとき母死亡。父は負債を残して死亡 | May-1997 | 契約結婚 ヒーロー8年ぶりの帰郷 家族の確執 | Charity Duncan(23)、 Anthony Earheart ,Marquess of Staunton (28) | 父親を辱めてやりたい、故郷に8年ぶりに帰るヒーロー。冷然とした父親。柔らかい部分を人にみせるのが不得意な人間の描き方が上手いねぇ。ヒロインが少し出来すぎ嬢だが、ヒーローと父親の話があまりに上手いので許す!(笑) | 好き |
Signet | A Christmas Bride | ヒロインは19歳のとき54歳の夫と結婚、26歳で夫死亡(Precious Jewelの義母) | Nov-97 | dark angel5 [設定]はPrecious
Jewel のラストから1年後、Plumed Bonnetから2年後。 自分を罰し続ける冷笑家ヒロイン。 |
Lady Helena Stapleton(36)、 裕福な商人Edgar Downes(36) | 思いがけずPrissとGeraldに再会して涙が出てしまった。。 だがこの話はう〜む、、、後半急に良くなった感じで、それもGeraldのセリフとかが良かったからで、このH/Hだけだったらこんなに良くならなかったんじゃないかなぁ。 ヒロインのハリネズミのような言動があまり同情できなかったし・・・ | |
DELL | More Than a Mistress | ヒロイン17歳の時母病死、一年後父も死亡。 ヒーロー17歳の時父死亡。 | Sep-00 | 逃亡ヒロイン 育った領地に帰りたくないヒーロー | Durbury of Candleford伯爵令嬢 Sara Illingsworth, Jane Ingleby(20), Duke of Tresham Jocelyn Dudley(26), | 途中まで快調だったのだけれど、後半があまりにイマイチ。突然 farce になった。事件の解決があまりにバカバカしい。叔父のところへ行くヒロインが愚かだ。ヒーローに怒りを抱くのは納得だが、けんかが子供っぽくて失望する。ヒロインはもっと「自分」を持っていたのではなかったか? | |
クリスマス2004 十九世紀の聖夜 | 金の星に願いを | ヒロインの父(牧師)一年前に死亡、 | クリスマス短編 正体を隠すヒロイン 一夜の関係 | ヴェリティ・ユーイング(踊り子ブランチ・ 22)、 フォリングズビィ子爵ジュリアン・デア(29) | No Room at the Innと同じクリスマスの予期せぬ出産ドラマ。 気持ちいい幸せ感。 | ||
ヴィレッジ | ただ愛しくて | ヒロインは10年前にレイプされ妊娠出産。 ヒーローは半島戦争でフランス軍の拷問にあい、右半身大火傷、右目無し、右腕無し。 | 傷ヒーロー、 傷ヒロイン 出来ちゃった婚 家族との確執 | 女学校教師アン・ジュエル(29)、レッドフィールド伯3男、領地管理人シドナム・バトラー | 主人公たちは良いのだが、、まわりの脇役が多すぎてややウザイ。結婚後に乗り越えてゆくふたりの課題はヒーロー部分は丁寧だが、ヒロイン部分はやや肩透かし。10年間の恨みや失望はこんなもの? 悪くないんだけどエンターテイメント味があるハリウッド映画みたいな気がする。 |