アリシア・スコット  2004年1月初まとめ
リサ・ガードナーのHQ時代のペンネーム。
教祖さまの宣託をうけて、読んでみました(笑)。

2004年3月改訂版

開口一番 上手いっっ!うまいよーー!
凡百なHQを越えている筆力を持つ。
背景を作るうえでの資料集めがしっかりしているし、登場人物の感情の分析がとても丁寧である。
そして、なんていっていいか、とんがっているとこがいいっ。
とても荒ぶるものを感じる。ものを書きたいという情熱が主人公たちを通じて伝わってくる。

翻訳されてるのはシリーズになっている3冊なんだけど、これがねぇ、なんか違うのよ。
翻訳3冊読んでから、未訳のものを読んでみると、この翻訳3冊、なんだか浮いてるの。
たまたまかもしれないけど、わたしが読んだ未訳ものたちは、
後のリサ・ガードナーに直結するテーマを持っていて、
ハードボイルドの趣きと、息詰まる官能性を湛えているのよ。
シリーズ一冊目の「赤い髪の伝説」はまだその香りが残っているんだけど
2,3冊はどこか違う感じ。

翻訳は日本向けの無難な3冊を選んだのかなぁ。
いや、もちろん、これだってとても上手いのよ。でも、
彼女ならではの魅力は、尖った社会性と切ないまでの官能性にあると思うので、
(あっと、いつものように、独断と偏見ですけどね 汗)
ほかのHQも紹介してもらいたかったなぁ。。

読んだ未訳のものに共通するのは、ヒーロー、ヒロインが対等の間柄で、
描き方もそれぞれに重点をちゃんと置いているってことと、
ふたりとも、とても情緒的で、かつ、理性的で、ある種、ノブリス・オブリージェを
体現しているってことかな。
昨日よりもほんのすこしだけ違う明日へ、社会に関わる熱い思いを抱えている。
だからといって、大上段ではないし、たいていは暗い底辺をうごめく事が多いけれど
でも、読んでいて気高いものを感じずにはいられないの。
たいてい、その使命感が燃え尽きかけて、疲弊している脇役がいるのも切ないわ。

理屈じゃない欲望や渇望、苦しみに翻弄されながらも、
相手を理解しようとする気持ちを決して忘れない。
屁理屈や思い込みを自分に諌める強い精神があるのが嬉しいの。

ふたりの間には、いつも、とても大きな違いー家柄、家族、社会における位置などーが
存在して、乗り越えられやしない、と諦めかけるのね。
「わたしはあなたにふさわしくない・・」
「俺は君にはふさわしくない・・・」
強い精神や信念だけでは足りないんだっと感じるとき、彼らを強くしてくれるのは「愛」なのね。

リサ・ガードナーに至る道筋が目にみえるようだけれど、
でも、そこは、やっぱりHQなので、最後はハッピィエンド(うふ)。
普通のHQロマンスは物足りないけど、身をきるような苦しみはご勘弁、、
という読者にはぴったり、というか、幸運だと思うぞ、こんなのHQで読めるのは。
カテゴリー 題名 過去 出版 ジャンル ヒロイン、ヒーローの名前 感想 一言
SIM-466 WALKING AFTER MIDNIGHT ヒロイン、捨て子。里親を転々とし、16で家出。売春ドラッグひも野郎の餌食に。18で逃げる。以後3年間リハビリを受ける。 1992 サスペンス、 傷物系 闘うヒロイン ストリートチルドレンのシェルター運営、サンドラ・ダンカン(29)、 警部補トーマス・レイン(42) うわ〜ん。痛ましい過去を消すことはできないけれど、前を向いて歩くことはできる。恥じたりしない。河のこっち側とあっち側。。リッチで幸せな家庭に育ったヒーローが、ヒロインに惹かれていく様子の誠実な描写ときたら・・。この胸をしめつけるほどの愛に泣けるっ。。脇役も良し。 うるる!
SIM-546 SHADOW'S FLAME ヒーロー私生児、母親8才のとき死亡。以後ストリートチルドレン。ほんとうに名前が無い 1994 ヒロインを守るヒーロー、 闘うヒロイン 新聞記者リリー・マクダグラス、 DEA覆面捜査官シャドウ うまい〜っ、ミャンマーのむせ返るような熱帯夜と、NYの暗い夜。 正義や使命、生きる意味、互いの瞳にみつけた愛。。もうもうもうっ。エピローグだけは許せないが(笑)、HQだと思って我慢だっ(爆) うるる
SIM-668 HIDING JESSICA ヒロインの父はアル中でDV。14才のとき母が父を射殺。 1995 証人保護プログラム 元モデルジェシカ・ガヴォニー(24)、 FBIエイジェント ミッチェル・ギネス(ミッチ) 過去を頑なに隠すヒロイン。男を信じられないってわけで、惹かれては突っぱね、惹かれては突っぱね、、懲りないヒーローは何度でも玉砕っす(爆)。 FBI内部のリークって奴が肩透かしのラストだった。。  
SIM-713 THE ONE WORTH WAITING FOR ヒロインの母はアル中で死亡 1996 再会(15年)  幼稚園教師スザンヌ(32) SEAL ギャレット・ギネス(34) 火傷と銃創、極度の栄養失調、ぼろぼろの姿で突然帰ってきたヒーロー。自分がいると彼女のためにならない、とか言って、ぎゃ〜、ばかばかばかっ!追っ手の謎がちょいと肩透かしだった。。 (ジェシカは妊娠8ヶ月)
SIM-723 THE ONE WHO ALMOST GOT AWAY ヒロインの母は6歳のとき死亡。 Jul-96 美術品泥棒捜査 はめられたヒーロー 戦うヒロイン FBIエージェント レジー・オドール ギネス・コーポレーション会長ジェイク・ギネス 軽いのか深刻なのか、謎だ〜。やたらとホットないちゃつきシーンが挿入されちゃう。 ヒロイン!捜査中にそんなにキスしていていいのかっ?! シリアスな展開なのに、アンバランスで悩みます。  
STH-9 甘すぎた罠 ヒロインの母は12のとき死亡。父はその後死亡。 ヒーローの兄は14のとき死亡。5年前に離婚。 1997 命を狙われるヒロイン 市の収入役ジョージー・レイノルズ、 刑事ジャック・ストライカー(34) ワケのわからない36時間シリーズだが、そんな場合でもアリシアは上手いねぇ〜。特に敵から逃げているときのスリリングな展開ときたら。。 うまい
LS-57 赤い髪の伝説
(Maggie's Man)
ヒーロー12歳で母死亡。 ヒロイン7才のとき父飛行機事故 Feb-99 逃亡用人質系 Plain Jane、 抑圧トラウマ 結婚カウンセラー、マギー 元コンピュータープログラマー(脱走殺人犯)カイン うまい〜っ!背景とドラマ、ユーモアと緊迫感、たたみかける会話、清冽な思い、群を抜いてます。 ヒーローさま、むっちゃ好みです。 へこたれない赤毛ヒロインの精神的成長も嬉しい。ツボ満載。 うひひっ
LS-59 月夜の復讐
(Macnamara's Woman)
ヒロイン10年前にひき逃げで両親、BF死亡、自分は大怪我。 ヒーロー11才で母死亡。12歳で父飛行機事故 Mar-99 騎士ヒーロー、ミステリー系、PTSDヒロイン 広告代理店タマラ、 バー経営、パートタイム保安官手伝いC・J 犯人探しというより、ヒロインの苦しみからの再生。とことん優しいヒーローは惚れた女を助けぬく。脇も含めて女性側のドラマは充実してるが、男性側のドラマがちょっと弱い。特に犯人像の描きこみが不十分で行動も軽率で残念。
LS-61 探し求めたものは
(Brandon's Bride)
ヒーローが12歳のとき父飛行機事故で死亡。妻は4年前に死亡 Apr-99 父性喪失トラウマ サスペンス 災害系 牧場経営ビクトリア、 森林消防隊(元投資家)ブランドン サスペンスの盛り上げが緻密で上手い。 無責任だった父の罪を償うかのように自分に厳しく感情をみせない、挑戦に餓え、一方で安心を探している、ヒーロー像が秀逸。父子関係の考察も興味深い。それに比べると、ヒロイン像がやや普通。 またラストを締めくくるミステリー解決編としては弱いのでは? うる
SIM-980 MARRYING MIKE…AGAIN 4年前に離婚 2000 再会(4年)  警察署長サンドラ・エイキンズ、 刑事マイク・ローリンズ  なんて誠実で真面目で辛くて、愛にみちた物語なんだ。まいったな。 こんな風に愛し合えるふたり、っているの?HQでも最上級だわ。ヒロインがほんとうに素敵。そして少年犯罪の問題と人種差別と信頼と、、胸をつく、凄く濃い一冊。 うるるる!


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